ドイツ滞在3日目…すでに残り物感のただよう朝ごはんをお部屋で食べたら、この日は、この旅の主要な目的のひとつを果たす為に、今日も今日とてデュッセルドルフに向かいます。目指すはK21&K20!
デュッセルドルフのアルトシュタットの片隅には現代美術の宝庫であるKunstsammlung NRW(ノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館)があります。デュッセルドルフはアーティストの街。古くはパウル・クレー、戦後にはなんといってもヨーゼフ・ボイス。そして彼に連なるナム・ジュン・パイク、今年なくなったジグマール・ポルケ、そしてわたしの愛するゲルハルト・リヒター…などなどなど。そもそもわたしが彼らの名前と作品を知ったのも、この街でこの美術館と出会ったから。これら現代美術のコレクションを誇る州立美術館ですが、21世紀になって21世紀美術のコレクションをK21として別の建物に移動、元の美術館はここ数年、残念ながら改装のために閉館をしていました(その間、日本にも
コレクション展が巡回してきていました)。それがついに20世紀美術を扱うK21として今年再オープン!まだ訪れたことのないK21と、そしてリヒターとの再会を果たすべくK20へ、わたしはどうしても行かねばなりません。
中央駅からトラムでグラーフアドルフプラッツへ。そこから歩いて5分程度…一見すると「ここが本当に21世紀美術を扱ってるの?」と思える、古めかしい建物がK21です。写真撮り忘れたので、
wikiにリンク。こちら19世紀、プロイセン時代の議会が入っていた建物だそうです。
K21は中央部分は吹き抜け。回廊の部分に展示室。1部屋に原則1展示です。そして各部屋には作品解説をしたポストカード(言語はドイツ語と英語。無料)が設置されていて、そのまま記念に持ち帰ることができます。これは素敵なアイディア!さらに1部屋(1展示)に1学芸員…開館時間を過ぎたばかりの美術館、展示室に入るたびに何か期待するような目で見られると…ちょっと落ち着かないような気分も…。
いずれにせよ、考える前に感じろ!的な現代美術大好きなわたしには、非常に楽しめる美術館でした。特に気に入った展示(インスタレーション)は、"Dark Pool"。木のドアを開けて。みると、そこは雑然と散らかった薄暗い書斎のような場所…。闇の中に学芸員がひとり(わたしはつい彼に「ごめんなさい、でも、わたし、あなてもこの作品の一部かなと思ってしまいました」と言ってしまいました…それくらいなじんでる!)。"Das ist fuer Sie."「どうぞお座りください」の静かな明るい声に書斎の椅子のひとつに腰掛ければ、男女のささやき声が聞こえてきます。書斎の中には夢をかなえる機械…なるものもあり、「この銅版の下に望みを書いた紙を入れて願えば…」とかという、おそらく「書斎の主」の説明に従い、わたしはつい「バラックに勝利を!」と日本語で書いてたーっぷり願ってきました。かなうかな、わくわく。それにしても、ことばでは説明しがたい不思議な空間です。散らかったホームズの書斎の夜の光景…とでもいえばいいのかな。いろいろな道具が散らかっていて、そこにたくさんの想いが渦巻き…誰もいないのに、非常に人間の想いが渦巻く空間でした。
わたしがもうひとつ気に入ったのは、"My Grandfather's Shed"という作品。展示室の片隅にある木でできた小屋の中に立ち入っていくという作品・・・先の"Dark Pool"も薄暗かったけれど、こちらはもっと暗い!壁を手探りで、きしむ床を危なげな足取りで進めば、、小屋の奥、隅っこに小さな光が見えます。なんだろう?と思って、しゃがみこんでそこを眺めてみると…空から下界を見下ろす天使が…。下界を見下ろす天使を見下ろす自分…きっとその背後には、また大いなる存在があるのかもしれない…不思議に幸福で、涙が止まらなくなる展示でした。
この他、"Mann und Maus"(人間とネズミ)も面白かった。ベッドで眠っている人間(リアル!実際の人間の顔から型をとったらしい)の上にのっかる巨大なネズミ…見た瞬間に「うわー、悪夢…」って思ったのですが、解説を見れば「これは悪夢か、はたまたラヴアフェアーか」た、確かに…悪夢と思えば悪夢だけれど、このネズミとヒトが愛し合ってるならこんなステキなことは…。なお、巨大タコとそれに絡めとられた潜水夫…ってバージョンもありました。うーむ、そこに愛はあるのか?
1階から展示を見ながら、わたしは螺旋階段を使って上の階に上がる方法を選択。階段の小さな窓から各階の様子が見えるのですが、まぁそれがまた見事に「作品」。そこを歩いている人間もみんな「作品」。建物全体がアートという多層的な構造になっています。この辺りの様子もよければ
wikiで。