2011.12.11 Sunday
日帰りロンドンの旅(2011秋ドイツの旅2)
夜明けのロンドン・スタンステッド空港 午前7時30分(GST)
ドイツ旅行中の10月21日、日帰りで、ロンドンに行きました。テート・モダンで開催中のゲルハルト・リヒターの大規模な回顧展"Panorama"展を観るためです。わたしはリヒターの絵が大好き。彼の絵、特に、色彩を見ていると、血が沸くというか、細胞がうごめくというか、もう、肌の下がぞわぞわするようなたまらない感覚があるのです。
なお、09年にロンドンのナショナル・ポートレイト・ギャラリーでリヒター展を見たときのおはなしはこちら。
日帰りでドイツからイギリスというと、けっこう大変そうに聞こえるかもしれませんが、滞在していたケルンはドイツの北西部。直線距離だとベルリンに行くよりロンドンの方が近い。フライト時間も約1時間ちょい。東京・大阪といった感覚です。
移動に利用したのは、大手LCCのひとつGerman Wings。こちらの利点は、価格はもちろんなのですが、街中からアクセスのよいケルン・ボン空港(ケルン中央駅から電車で15分程度)をベースにしていること。ロンドンは郊外のスタンステッド空港利用となりますが、現地でゆっくり遊ぶのに必要な早朝の便を選択する背中を勇気を与えてくれます。
朝5時前に、身軽な恰好でアパートを出発。下弦の月と星空。月が出ているのに、京都でふだん見上げるよりずっとたくさんの星が見えるのにびっくり。
機内預けの荷物が別料金になるため、帰りに荷物が増えても大丈夫なよう大きめのカバンに荷物は少な目で。機内預けの荷物さえなければ、チェックインも搭乗もiPhoneだけでできるため、カウンターに寄る必要もありません。ケルン空港はFree Wi-Fiでとっても快適(ちなみにスタンステッド空港もFreeWi-Fiでした)。ものすごくスムーズ。LCCはよくバスに例えられるようですが、確かに、磁気カードで乗るバス感覚です。
ロンドン郊外にあるスタンステッドからは、主要都市に向けてのバスがたくさん出ています。今回はナショナルエクスプレスのチケットを選択。NEのバスは、これまた中がFree Wi-Fiで、この日いちにちのルート確認やスケジュール考えるのにもとても便利でした。日本の高速バスも結構乗るけれど、このサービス提供しているのには乗ったことないなぁ。日本にもぜひ!バッテリーの残りを気にしつつ、あれこれ調べもの。車窓の外には明けてゆく空。
やや渋滞にまきこまれながら午後10時前、バスはロンドンのビクトリアステーションに到着。バスの中でシミュレートしたルートに従い、地下鉄でマンションハウスへ。前回ロンドン滞在したときに作ったチャージ済みのオイスターカードがあったので、さっさと改札を通過。目的地について地上に出たら、テムズ川を探します。おお、視界が開けてるからたぶんこっち!あっ、正解!テムズ川が見つかれば、ロンドンブリッジを横に対岸に渡り、少し歩けば、はい。今回の目的地、テート・モダンです。以前に来たことのある、しかもわかりやすい場所とはいえ、ケルンからここまで、まったく迷わず来られた自分に、ちょっとよくできました感(笑)
オープンしてまだ間もないゲルハルト・リヒター展は、「わ、混んでいる!」。海外の特別展ってそれほど行ったことないので、どれくらいで「混んでいる」というものなのかよく分からないのですが、少なくとも09年に同じロンドンのナショナル・ポートレイト・ギャラリーで行われていたやはりリヒターのポートレイト展とは、くらべものにならない入り。さすが、人気画家の大規模回顧展という感じです。
来場者の話すことばも本当にさまざま。ロンドンのミュージアムの常設展は無料。アートにそれほど興味のない観光客ならわりと高い入場料(私が払ったのは寄付付の14£)のかかる特別展に行くことはないんじゃあないかと考えると、ここにきている各国の人々は、わたしと同じように、このリヒターを見るためにテート・モダンに来たのでしょうか。
展示は13室。回顧展ということで、彼の作品が初期のものから最近のものまでが時代順に並んでいます。リヒターはまったく異なった作風の作品を作ることで有名なのですが、それにしても改めて驚くのは、その作風が時代によって変わっているのではないことを思い知らされること。まったくの抽象画の横に、美しい花のフォトペインティングと壁にかかった大きな鏡、そしてガラス作品…ひとつひとつの作品がその世界を作っていると同時に、展示室自体が、リヒターという画家の世界として存在しているのです。しかしどこでも考えさせられるのは、「わたしが見ているのは何か」ということ。現実か虚構か。もし、この目がとらえるものが虚構なのだとすれば、いったい現実はなにによってとらえられるのか?