11/12サッカー迷言大賞ノミネート発言

毎年おなじみドイツサッカー文化アカデミー(Deutsche Akademie für Fußball-Kultur)の11/12シーズン、サッカー名言大賞の候補11発言が発表になっています。

選手、監督、スタッフそしてファンの、サッカーをめぐることば。スピーチなどではなく、ほとんどがその場で本人の口からぽろりと出たもののはずなのですが、悲喜こもごもの場面のなかに、奥深いものあり、ウィットに富んだものあり。毎年毎年ニヤリとさせられてしまいます。


Top-11 des Fußballspruch des Jahres


いくつかがんばって読み解いてみました。

◆フランツ・ベッケンバウアー
「まさに巨人対ゴリアテの試合でした」(CL準々決勝アポエル対レアル・マドリー戦終了後)
旧約聖書に出てくる巨人ゴリアテと戦ったのは羊飼いの少年ダビデ…ということで、ふつう一見弱く見えるものと強大なものの戦いは「ダビデとゴリアテの戦い」、だから、まさにアポエル対レアルを修飾するのにふさわしいことばのはず。そのアポエルを「巨人」と言い換えたのは、アポエルがギリシャ神話に登場するひとつ目の巨人キュクロプスが住むといわれたキプロス(島)のクラブだから…という解釈であってるよね?こういうことばがさっと出てくるのははさすがヨーロッパ人だなぁ。


◆あるカイザースラウタンサポ
「愛にリーグは関係ない」
(ほぼ降格が決定したときに掲げられたボードの文字)

※このことば自体は、カイザースラウタンのライバルクラブである1FCザールブリュッケンで長くスローガンとして使われているものだそうです(ノミネート後に判明したようです)。

元のことばは"Liebe kennt kein Liga."…"Liebe kennt kein(e)...とくれば、「愛に〇〇は(関係)ない」の決まり文句みたいなものかな?「どこのリーグにいても愛してるよ!」というサポーターの気持ちが素敵。


◆ユルゲン・クロップ
「水曜日は、『俺たちは俺たちだ』対『俺たちがサッカーだ』ですね」
(バイエルン対ドルトムント戦の前に)

『俺たちは俺たちだ』はバイエルンのスローガンのようになっているバイエルン語"Mia san Mia"の私的理解(バイエルン語分からないけど、おそらく"Wir sind wir.”という意味だろうとずっと思っている)。バイエルンが"「自分たちらしくやる」のなら、ドルトムントは「自分たちはサッカーをします」と。


もひとつクロップ
「私のモチベーションを瓶につめて売ったら、逮捕されますよ」
クロップのモチベーションはドラッグ並み(笑)


◆トニ・クロース
「ともかく、今回は2位ではありませんでした」
(ユーロの準決勝敗退で)

リーグ2位、DFBポカール2位、チャンピオンズリーグ2位。…EUROは2位はイヤだとのぞんだバイヤンからのドイツ代表、みごとに準決勝敗退。


◆オットー・レーハーゲル
「コビアシュヴィリは、第二次世界大戦以来最もフェアな選手です」
(コビアシュヴィリのレヴァークーゼン戦での退場について。コビアシュヴィリはその後、フォルトゥナデュッセルドルフとの入れ替え戦での暴力行為により7ヶ月半の出場停止処分に)

と、説明が長いのですが、ポイントはコビアシュヴィリがどうこうではなく、「第二次世界大戦以来」なんてことばがすらっと出てくるレーハーゲル(1938年生)か。さすがキング。


◆ストール・ソルバッケン
「ああ、うちの妻からだよ。私に明日も職があるのかって知りたがってるんだ」
(ホームでのアウグスブルク戦敗戦後の記者会見中に携帯が鳴って。ちなみに、彼の解任はさらにこの2試合後)

追い詰められた状況でこのジョークを出せるのは素晴らしい!…ま、それでクラブが救われるわけでもないのだけれど。



決勝は10/19ニュルンベルクで。栄冠を勝ち得るのはどのことばでしょうか。

ペルー対チェコ(キリンカップ2011)

 

ツェフ(チェルシー)とカドレツ(レヴァークーゼン)がチェコ代表として来日ということを受けまして、昨日は松本はアルウィンまでキリンカップ2011の第2戦、ペルー対チェコの観戦に行ってきました。アルウィンはすっきりとしたとても綺麗なスタジアムで、スタンドとピッチの距離も近くてとても見やすく、実際、一番前の列からだと臨場感満点で大満足。しかし、見易さ以上に嬉しかったのは、この試合が期待以上によい雰囲気で行われたということでした。

スタジアムに行って驚いたのは、白地に赤の斜めストライプのユニを身につけたペルーサポの多さ。日本にはたくさんのペルー人が住んでいるし、確実にチェコサポよりはたくさんの人数が来場しているだろうとは想像していたのですが、実際のところ、スタジアムの雰囲気は完全にペルーホーム。国家斉唱もスタンドに歌声が響き、はるばるこの2試合のためだけに日本にやってきたペルー選手のモチベーションを、いやがおうにも上げたのではないかと思います。最初から最後まで続いたペルーの前へ前へという攻撃に、来日まもなく疲れてるであろうチェコ代表が力を引き出して必死で対応するという構図…思った以上のガチンコ対決になったのには、行った甲斐がありました。ツェフが仕事するところも、いっぱい見られたし…カドレツのポカも見られたし…^^;;

試合は0-0。週明けの日本対チェコも、よい雰囲気になることをいいなと思います。そして次こそ得点が入りますように。


サッカー選手は世界を救う(ために行動する)

‘SCORE THE GOALS: Teaming Up to Achieve the Millennium Development Goals’

国連のさまざまな機関の親善大使を務めているサッカー選手や監督をフィーチャーした国連製作のマンガ「ゴールを決めろ:国連ミレニアム開発目標達成のためのチーム結成(Score The Goals: Teaming Up to Achieve the Millennium Development Goals)」が、国連よりリリースされました。

あらすじ
国連の主催するチャリティマッチに向かう国連親善大使を務める10人の選手とファンを乗せた船(二酸化炭素排出を防ぐために船を使ったらしい)が海上で嵐に巻き込まれ遭難…無人島にたどり着いた選手とファンたちはこの危機をいかにして切り抜けるのか?

登場する10人の選手と国連における役割は次のとおり
ロベルト・バッジォ、ヴィエラ、ラウール(以上FAO/国連食料農業機関大使)、
バラック、アデバヨール(UNAIDS/国連合同エイズ計画大使)、
ドログバ、カシージャス、ロナウド、ジダン,(以上UND/国連開発計画大使)
フィーゴ(Stop TB/ストップ結核大使)

まぁこのメンバーでどーゆーフォーメーション組むつもりよ(カシージャス、ポストがだけが友達状態か?)?とかそもそも10人しかいないじゃん、試合に出るはずだった他のメンバーはどうした?とかいう突っ込みはなしの方向で。マンガは主に8〜14才までの子どもたちに、国連ミレニアム開発目標の掲げる8つの目標を理解してもらうこと、そして付属のガイドを読むことによって適切な行動をとることを勧めるものとなっています。

今年のサッカー名言大賞は誰の手に?

ドイツサッカー文化アカデミーが主催する「ドイツサッカーカルト賞」。こちらの人気部門?である名言大賞のノミネート11人が発表されています。ここの常連であるルーカス・ポドルスキ王子は今年もノミネートされてます。

候補者とその「名言(迷言)」は次の通り…といいたいのですが、これって自分でもちゃんと理解できているのか心配。いちおう紹介はしてみるのですが、話半分くらいで読んでいただけると…。


フランツ・ベッケンバウアー皇帝
「(WMにおけるドイツ代表の素晴らしいパフォーマンスの説明を求められて)分からんよ。レーヴ監督にききたまえ、彼も分かってないんだが("I weiß es net. Frag den Löw, der weiß es auch net.")」
じゃ、いったい誰に聞けと…

ユルゲン・クリンスマン
「(ビジャについて)一言で言って素晴らしいですね。彼が1対1を、2人に対してしかけるさまは("Einfach traumhaft, wie er eins gegen eins geht - gegen zwei Leute.")」
…相手は分裂したのか?

ユルゲン・クロップ(BVB監督)
「ヨギのことは好きだよ。彼のデオも、彼のシャンプーも使ってるさ("Ich mag Jogi - ich benutze sein Deo, sein Shampoo.")」
※注:ヨギ・レーヴ監督はNIVEA for MENのイメージキャラクターです。

ウド・ラテック
「ケルンのスタジアムの雰囲気はいつも最高です。ここの雰囲気を邪魔してるのは、はっきりいってチームだけですよ("Im Kölner Stadion ist immer so eine super Stimmung, da stört eigentlich nur die Mannschaft.")」
ケルンの王子さま、頑張ってー!

ローター・マテウス
「わたしに関する憶測には、わたしは関与したくないんだ("An den Spekulationen über mich möchte ich mich nicht beteiligen.")」
マテウスにはきっと、このおかしさが分かんないんだろうな…

デニツ・ナーキ(ザンクト・パウリ)
「俺は貧民街の出さ。あそこじゃみんな、ポン引きかサッカー選手のどちらかになるんだ("Ich komme aus der Gosse, da wird man entweder Zuhälter oder Fußballprofi.")」

ルーカス・ポドルスキ王子(ドイツ代表)
「(WM予選フィンランド戦後、「1対1という結果にがっかりされてますか、それとも、1ゴールあげたことを喜んでらっしゃるんでしょうか」と聞かれて)どっちかというと、両方とも大きいッスよ("Es überwiegt eigentlich beides!")」
…だから、よりどっちの気持ちが大きいのかを聞いてるの!しかし、この試合は実際に見ていたので、ちょっと感慨深い。

トニ・シューマッハー
「イングランドはもはやサッカーの母国ではなく、サッカーの祖母国だ。そんな気がしています"Ich habe das Gefühl, England ist nicht mehr das Mutterland des Fußballs, eher das Großmutterland."」
どっちにしろ、サッカーが生まれた国ってことには変わりないんじゃあ…

ホルガー・スタニラフスキー(パウリ監督)
「わたしが欲しいのは、最高のイレブンであって、最高の11人じゃあないんだ("Ich will die beste Elf, nicht die besten elf.")」
格変化のない英語ではできない言い回し。

トマス・トゥッヘル(マインツ監督)
「(バイエルン戦の前に)早い時間帯でのゴールと速い攻撃ができれば効果的です。そしておそらく、うちのゴール前にチームバスを停めることもできますね("Helfen würde uns ein schnelles Tor und ein schneller Abpfiff und vielleicht können wir ja den Mannschaftbus vor unserem Tor parken.")」
ゴール前にバスを停めるってのは、言語を問わずヨーロッパサッカー界に共通の言い回し?英語では"park the bus"という表現は、絶対に失点をしないっていう意図を持ったドン引きディフェンスに対して使いますよね。※この表現の語源に言及したブログがあったのでリンクを。こちらによると、スペイン発祥じゃないかということです。

ルイス・ファン・ハール(バイヤン監督)
「わたしはインテリジェントな監督なんだ。わたしが鍛えるのは、脚よりも頭の方だ。それがうちの選手たちには難しい("Ich bin ein intelligenter Trainer. Ich trainiere mehr fürs Köpfchen als für die Beine. Das ist schwierig für manche Spieler.")」
監督、ご苦労さまです。

さて、栄冠を獲得するのは誰?

ラファに聞いてみよう(その2)

European Football Weekends

ラファエル・ホーニッヒシュタインネタの2つめは、先週末にWeb上に掲載された彼「へ」のインタビュー記事。彼がインタビューした記事ならいっぱりあるけれど、彼へのインタビューなんてのは珍しい。
このインタビューを行ったのは、「ヨーロピアン・フットボール・ウィークエンド(European Football Weekend=EFW)」というブログの管理人Danny。こちらのブログは今回のインタビューがきっかけで知ったのですけれど、自分のクラブ(イングランドのLewes FC…7部くらい?)を応援してたんじゃ永久にヨーロッパの舞台に出られない!ということに気づき、ヨーロッパサッカー現地観戦を行ってはそのレポートを掲載されています。スタジアム紹介やブンデス記事も多く、極東から現地観戦を行っているブンデス派人間にとっても、いろんな意味でとっても参考になりそうです。

が、もちろんここでの注目はホーニッヒシュタイン「へ」のインタビュー。南アフリカ現地の様子、今大会におけるドイツ代表とイングランド代表、イングランドサッカーの抱える問題点とブンデスリーガ、そして彼ならではの「ドイツとイングランドのサッカーの違い」について、彼のおなじみのドライなユーモアを交えて話してくれています。

面白かったのは、今大会での新たな気づきとして次のことをあげていること。
「荒れたピッチとクレイジーなボール、そして高度が、マズいチームをさらにマズいことにしたこと。数字のみで表された戦術的なフォーメーションに意味がないこと、日本がちょっとはやれること。そしてイングランドはカペッロになってもやっぱりイングランドだったということ」
お、ホーニッヒシュタインの口から日本の話が出るなんて…。ホーニッヒシュタインとは少しズレますが、彼もレギュラー出演しているPodcast”Football Weekly"でも、日本のことは話題になってました(日本人の「ゼノフォビア=外国人恐怖症」について言及されてるのは興味深かった)。まぁ、彼のいうこの「ちょっと"a bit"」ってのは本当に"a bit"なんでしょうけれど、でも、それでも目に留まったということ、つまり語るに値したというのは嬉しいことです。イングランドはやっぱりイングランドってのは彼らしい言い回し。イングランドについてもさらに言及しています。ランパードのゴールが認められてたら、イングランドは優勝してた…と思うかと聞かれ
「いや。同意できるのは、イングランドはそれで流れをつかんだろうし、あのゲームは異なった結果になりえたかもしれないということですよ。イングランドがおかしくなことになったのはブルームフォンテーンではなく、グループステージでです。あの3試合ので、どんなかたちでもいいからゴールひとつ決められていれば、どうにかこうにか少なくともセミファイナルまではいってたでしょう、ガーナとウルグアイを倒して。そのことは本当に信じてますよ。けれどおそらく、長い目で見ればイングランドサッカーにとっては、もう一度1990年みたいな負け喫するよりは、こうやって負けといた方がよかったんだと思いますけどね」
ホーニッヒシュタイン節ですね。ただこの中身には前面的に同意。イングランドについては何より、フットボールをめぐるクラブと代表、メディアとそれ以外の対立構造こそが問題であると話しています。ドイツのメディアが代表をサポートしてるって話は、WM中に鈴木良平さんもよくおっしゃってましたよね。クラブと代表との対立…はドイツでも問題にはなってますけれど、それでもやっぱりそこには「妥協」がある。イングランドにはこの「妥協」が欠けているのだということです。この他にも、イングランドの監督、そしてイングランドにおけるクラブ「買収」という最悪の文化についてなど、ドイツ人ならではの視点で、イングランドサッカーを評価しています。

けどもちろんその目はドイツにも…。Dannyの周囲には最近自国のプレミアじゃなく、ドイツに行ってブンデスリーガを見ようというファンが増えてるということに対して…
もちろん。ブラートヴルスト(焼きソーセージ)にビール、立見席はあるし、チケット代は安い…気に入らないところなんてないでしょう?間違いなくあそこは非常に優れた「2部」リーグですよ。
と、言い切れるところは、イングランド在住ならではでしょうね。ドイツじゃプレミアを「世界最高」とは書いても、ブンデスのことを「2部」とは書けませんから…。でもブンデスは、観戦する側からすれば、世界最高のリーグなんですよね!ビールは飲めるし立ち見も席もある。ソーセージの美味しさはプレミアとは段違い!これはわたしも体験したブンデスの素晴らしさであり、それが世界最高の観客動員に繋がっているわけです。

ふたつの国、ふたつの文化、ふたつのリーグとふたつの代表…この間でうまくバランスをとりながら、両者を冷静かつ時にシニカルな目で描き出してくれる、それでも最後はやっぱりドイツ代表サポ!と明言するホーニッヒシュタイン。今シーズンはわたしの立ち位置がややドイツに偏る恐れがあるのでなおさら、彼の冷静なドイツ、ブンデスリーガ評で、萌え…じゃないや、熱くなり過ぎないようにしたいと思います。